NewProcess

1. ソフトウェア開発・保守業務NewProcessのConcept

ソフトウェア開発・保守業務のプロセス改革に取り組むに当たっては、どのような改革を行うかのコンセプトを

作っていくことが大切であります。下記に以前、使用したコンセプト例を掲げます。改革の方向性を示すとともに、

構成員の改革への意欲のベクトルを合せるためにも重要です。業態や組織の置かれた環境に従って、プロセス改革に

取り組む考え方は、当然異なってきます。それぞれ独自のコンセプトを作っていくことです。

2. 先進導坑と一個流し_スケジュール管理

TPSで有名な「一個流し法」をprogram開発に取り入れて効果を上げた事例について、簡単に述べます。

「一個流しprogram開発法」は、CADシステムのように、数多くのcommandを開発するプロジェクトに適しているといえるでしょう。

きちんと設計・実装されたデータ構造をベースにした基本部をまず開発し、モデルケースとなるいくつかのcommandを実装して動かします。

この段階を「先進導坑」が開いたといいます。次の段階からは、下図に示すように、モデルケースに倣ってモジュール単位(command単位)に一個づつ完成させ、テスト、マニュアル作成さらには、リリースまで持っていくという方法です。

スケジュール管理の「見える化」を図るとさらにプロジェクト管理が楽になります。

アジャイルソフトウェア開発の一種といえるかもしれません。

一個流し法の効果

①最初のリリースまでが短い。顧客は部分的でも早い時期から使用できて効果を出せる。

②不具合・仕様の誤りを発見した時、修正対象のプログラムはまだ少ない。

③マニュアル作成も一個流しの流れに入れることで、平準化・同時リリースが可能である。

④短い周期で繰り返すため、経験、学習が新鮮なうちに活用の機会が来る。

⑤負荷の平準化ができる。どの時点でも、設計、作成、テスト、マニュアル作成が行われている。

⑥目標は絞り込まれている。スケジュール管理は容易で、モラルは維持できる。

3. 集団における知の共有化と増幅プロセス 

下図A は、野中郁次郎先生が「集団における知の共有化と増幅プロセス」の考え方を、図にされたものです。

製造業の設計者と生産準備担当と製造担当を例に取れば、そのチームの3者は、当初案としての形式知を持ち寄り、

知を共有化し、暗黙知を高めます。それぞれに高めた暗黙知を持ち帰り、先の形式知を改良し、再びその形式知を持ち寄り、知を共有化し、

暗黙知を高めていく。この練り込みプロセスを繰り返し、チームとして優れたモノゴトを作り上げていくという考えです。

この考え方は、普遍的な考えですが、特に日本の製造業は、これが得意で日本のものづくりが高く評価される由縁であると考えられます。

ここで「練り込み」とはより良くするための設計改善であり、一種の設計変更です。その変更が全体に及ぼす影響を確実に知る方法とか、

既存の形式知を矛盾なく変更できる仕組みとかの、この増幅プロセスに適合した支援システムが必要となります。

一方、欧米のものづくりプロセスにおける知の共有化は、下図B のように表されます。欧米では、ロックスターデザイナーと呼ばれるような優れたデザイナーがいて、彼らの考えたものが形式知化され、共有化されますが、知の増幅はあまりなされません。

ロックスターデザイナーの代表としては、V2ロケット、アポロ計画のフォン・ブラウン博士がまずあげられますが、

自動車業界に例をとれば、そういったロックスターデザイナーがGMやフォードやベンツにもいます。彼らは、モデルチェンジに際しては、コンセプト・レイアウトのデザインをしっかり固めます。コンセプト・レイアウトを固めたら、それを形式知化したものを詳細設計グループに伝えます。この時は、知の共有化をするだけであり、よりよくするための設計改善は、そのアイデアが出ても、次の機会にしようとあまり行われないようです。というのも、設計改善をするとラインオフが遅れるし、契約をやり直す必要があるからであります。

詳細設計以降は、それ以降のプロセスを確実に実行可能にするための形式知化をしっかり行い、生産準備グループに伝えます。

このようにそれぞれの役割にあった形式知化を確実に行い、次のグループに渡し、モノゴトを作り上げて行きます。

また、詳細設計以降は、エンジニアリング会社に投げてしまう形態もあります。そのため、知の増幅はほとんどありません。

欧米のIT支援システムは、このような欧米のプロセスに適合したものになっています。

欧米の宇宙航空産業や軍需産業などは、このようなプロセスで優れた大規模宇宙航空システムや航空機、巨大艦艇を製造しています。

ソフトウェア開発分野の視点から見ると、図Aは、アジャイル型開発の必要条件の一つ、図Bは、ウォーターフォール型開発そのものと目されます。

現在、ソフトウェア開発の手法の主流は、欧米・日本問わず、従来のウォーターフォール型からアジャイル型に移行しつつあるようです。

日本のものづくりの良さが認められて、アジャイル型に影響を与えたといえるかもしれません。

図Aに示された、日本の本来持っている強みを活かしたソフトウェア開発の手法を追求していくことが、これからの日本の

ソフトウェア開発業界に望まれています。

先述した図Aに示される増幅プロセスに適合した支援システムの嚆矢となるものが、PRAであり、N_ASPであると考えます。

4. Newtreの考えるソフトウェア開発・保守業務のNewProcess 

下図は、Newtreで立案した、将来の「ものづくり準拠ソフトウェア開発・保守プロセス」の流れ図である。

ソフトウェアの試作部品表・生産部品表は、ものづくりの世界でいう「プロダクト・プロセスモデル」である。

このプロセスは、一つの案に過ぎない。将来、多くの案が考案され、その中から実用に供されて大きな効果を産むプロセスが

日本で誕生するであろうことを信じています。

5. 新手法適用による工数逓減・品質向上効果

工数逓減・品質向上効果についてはコンサルタント情報の項を参照して下さい。

・コンサルタント情報に引用した「ものづくり経営研究センター」での講演議事録に関連の記事があります。参考まで。

20131017コンソーシアム第3分科会議事録 最終版.pdf